ラジコンのトランジスタ H ブリッジ回路のことをまとめておく


(1)H ブリッジ回路

  @標準的な回路

・ モータを正逆する回路で、トランジスタを 6 個使用する。

・ Q 1、Q 2、Q 4、Q 5 は NPN ( 8050など ) 記号は、T 1、Tr 1 などもある。

・ Q の語源は、qristal ( 結晶 ) からという。オバQ も 3 本だね。

・ Q 3、Q 6 は PNP ( 8550など )

・ トランジスタは SW として使われ、正逆は下図のようにタスキがけで ON させる。

・ Q 1、Q 4 は信号分配、信号反転、+ 電源 VDD と VDD-IC との絶縁の 3 つの役割をしている。

・ Q 1、Q 4 は同時に ON させてはいけない。

・ Q 1、Q 4 は小信号なので、チップトランジスタの場合もある。

・ この回路では発電制動ブレーキはできず、フリーラン停止となる。

・ トイラジコンでは VDD は、3 V 〜 9 V、VDD-IC が 3.3 V ぐらい。

・ トランジスタ保護用のフライホイルダイオードがついている場合がある。




  Aトランジスタ単体の簡易チエック方法
    ・ PN 接合の P から N には電流が流れるのでこれをチエックする。
    ・ デジタルテスタ ( 赤 + ) とアナログテスタ ( 黒 + ) では、テスト棒の極性が逆なのでややこしい。
    ・ アナログテスタのほうが直感的で見やすい。

  A-1 アナログテスタの場合
    ・ × 1 KΩ のレンジにする。
    ・ TEST 棒の本体側プラグの赤黒を差し替える。これは TEST がすんだら元に戻しておく。

  A-2 デジタルテスタの場合
    ・ ダイオードテストにする。

・ NPN 8050、PNP 8550 の場合

・ アナログテスターでは、 約 3 KΩ か ∞
・ ダイオード付の場合は、∞ のところが 約 2 KΩ となる。

・ デジタルテスターでは、 約 0.6 V か 「表示変化なし」 を示した。

・ チップトランジスタのピン配置
  B接続注意点

上図は、NPN、PNP の正しい接続である。






下図は、E と C を間違った接続なのだが、この HPによると トランジスタとして動作する。
ただし、増幅率 hfe が 1 / 10 ぐらいに落ちるそう。

型番 8050 や 8550 などは亜種が多く、足ピン順が絶対とは言い切れないところがある。
また増幅率低下を逆手にとって使用している場合もあり ( 巧妙さに感心する )、正しく直すことがまずい場合もある。
単純な製造ミスとは言い切れないことがあるので、交換時は、じっくり考慮する必要がある。

増幅率低下を意図した?と見られる実例
100 均のデコレーションライト、単 3 電池 2 本、スライド SW、φ 3 LED 赤 4、橙 3、緑 3 の 10 個並列
PNP の逆接続になっている。異ロット品でも同じで単発の製造ミスとは考えにくい。
普通なら電流制限抵抗 R を入れるが、これにはついていない。

ベース電流を 1 mA とすると正接続なら hfe = 300 とすると 300 mA 流せるが、1 / 10 だと 30 mA しか流れず、抵抗が不要となる。
点滅なので正確ではないが、逆接続で 25 mA 、正接続にすると 30 mA 程度流れている。考えすぎだろうか?



(2)基板 H ブリッジ回路のチエック

  @回路の書きだし
    デジカメで撮影後、グレイ印刷して回路を追い、ブリッジ回路を手書きする。
・ VDD、VSS、モータ出力、IC からベース、基板表示 Q 1 などが手がかり

・ 型番は 8050、8550 でも、EBC 配列と ECB 配列のものがあるので注意

・ この基板では、Q 番号などが違うだけで、一般回路そのままで、ダイオードはなし。


  Aテスタで各トランジスタの簡易チエックをする。
    ・ このとき車体の電池は外しておく。
    ・ モータへの 2 線もマーキングし、基板から外しておく。

  B不良トランジスタがみつかれば交換する。



(3)モータについている抵抗、コンデンサ、ダイオード

おもちゃ修理を始めたころ、モータ端子に抵抗らしきもの、コンデンサ、ダイオードがついているのが来た。
コンデンサ、ダイオードはよしとして、抵抗らしきものは過去に見たこともなかったので 「何じゃコレ?」 とビックリした。

@抵抗らしきもの
これは、単なる抵抗と抵抗ヒューズの 2 種類があり、 1 W 〜 の容量と 〜 2 Ω ぐらいのものである。
抵抗ヒューズは抵抗にヒューズ溶断特性を付加したもの。
アキシャル型のインダクタでノイズ防止のチョークコイルではないか?の見方もあるがこれではなさそう。
目的は何?

・ トランジスタ保護
モータが停動したり内部で短絡すると、通電中の 2 個のトランジスタに大きな電流が流れる。
乾電池の電圧が電池の内部抵抗で下がるまでの間、この電流を抑え、破壊にいたるのを防ぐ。


・ モータ電圧の適正化
電池で 9 V の場合、モータは定格 6 V のカーボンブラシタイプが使用されるが、少し高いので落としてやる。
抵抗が 1 Ω、モータの定格電流が 0.6 A の場合
電池新品 9.6 V ( 1.6 × 6 ) − PNP 0.6 V − 抵抗 0.6 V − 抵抗 0.6 V − NPN 0.6 V = 7.2 V がモータにかかる。
ラジコンで 9 V の場合、普通に入手できるマブチモータ ( FA - 130 : 1.5 V、R E- 260 : 3 V ) は電圧が高すぎるので使えない。

この抵抗を交換したとき、W 数の小さいものでも通常運転時は熱くならないので、使えるとしてはいけない。
停止時に、フライホイル電流のため、一瞬で火傷するぐらいに熱くなる。


・ 緩起動
大型モータの起動電流を抑え、起動ショックを和らげる。
昔の電車では車体下の抵抗器をカツンカツンと切り替えていたね。

TOY ラジコンも最近では、PWM で変速駆動するのも出てきており、進化に恐れを感じる。
この分だと、G センサ搭載の転倒防止付や GPS で周回コース記憶付などが出てくるかも。


Aコンデンサ
これはおなじみの、整流子火花放電によるノイズ防止で、ラジコンでは必要で効果は実感している。

たいてい φ 7 ぐらいの茶色円盤形セラミックコンデンサの 104 ( 0.1 μF )がついている。
たまに正逆するのに有極の電解コンデンサがついてたりするのでビックリする。

モータ端子間に 1 個だけのものがあるが、モータ端子間、各端子とケース間の 3 個使用がよいらしく大抵これである。
ケースと電源の GND とは接続しないのが普通。

ノイズのことは超難解な分野で、さっぱりわからない。
モータのノイズ防止=茶色セラミックコンデンサの φ 7 の 0.1μF 使用と経験則で決まっているのかな?
青い積層セラミックの小さいのでも熱くならず使える。

モータのノイズ

マブチ FA - 130 モータのノイズを 1 Ω 1 W セメント抵抗の両端で見てみる。
モータ定格は、1.5 V 無負荷で 9100 rpm 0.2 A、適正負荷で 6990 rpm 0.66 A 。無負荷運転でモータ電圧は 1.3 V くらい。 
整流子は 3 極なので、1 回転で 6 回電流の流れが変わる。
無負荷では 1.3 ms くらいなので 7.8 ms / 1 rev 、1 分間では 60000 / 7.8 = 7692 回転となる。
周波数としては、1000 / 1.3 = 769 Hz
軸をつかむと波長が伸び、2 ms では 5000 rpm となる。



ヒゲノイズ高さは 500 mV ぐらいある。
0.1 μF ( 104 )コンデンサを 1 個モータ端子につけると、このヒゲは見事になくなる。
あと 2 個 を両端子とケースにつけても波形を見る限り、劇的な変化はみられない。

フライホイルダイオード 普通型 1N 4007 ( 1000 V 1A ) をつけてみたら、ヒゲはなくならないがヒゲ高さが半分以下に抑えられた。
ファーストリカバリー型 ER 504 ( 400 V 5A ) にしても変わらない。

アキシャル 1 μH インダクタ ( 茶 黒 金 金 ) 2 個 を両端子に直列につけたら、ヒゲはなくならないが、ダイオード並みに低下した。
10 μH ( 茶 黒 黒 金 )では、ヒゲはなくならないが、ヒゲ高さはさらに半分ぐらいに低下し、回転数も落ちた。

小生のつたない計測では、モータによる IC へのノイズ防止には、104 コンデンサ 1 個で十分みたい。


Bダイオード

モータの起動停止のもっとも簡単な回路で、ダイオードが逆方向につけてある。
SW は機械式 SW もあれば、トランジスタ、FET もある。
豆電球などは抵抗負荷なので電気を消費するだけであるが、モータはコイルなので誘導負荷といい、消費だけでなく発電もする。
誘導負荷では、ON、OFF など状態が変化するとき、レンツの法則にしたがって状態変化を打ち消すように発電する。
逆起電力によりというのをよく目にするが、向きを間違いやすいので、状態変化を打ち消すようにと考えるのがよい。
SW OFF 時に発生する高電圧をバイパスし、SW 接点に発生する火花、トランジスタなどにかかる高電圧を抑えて接点やトランジスタを保護するのがダイオードの役割である。


SW を ON するとモータに 3 V が加わり電流がゆっくり増加し回転を始める。
このときモータは加えられた 3 V の電流に逆らうように発電する。
これはモータが逆方向の + 1 V 電池になったようなものである。
モータの回転があがり、電流が通常電流に近ずくにつれて逆電圧も減り、ついには逆電池は消滅する。
実際には、ここまでと、このあともモータ内の整流子とブラシによる断続があるのだが、複雑すぎるので省略する。


SW を OFF すると状態変化が瞬時なので、瞬時に通常電圧の 7 〜 10 倍の順方向の電池となり、電流を継続して流そうとする。
OFF した瞬間の接点はまだくすぶっているので、ダイオードがないと接点間で火花を出して放電する。


ダイオードがあると順方向なので電流がモータとダイオードのループを環流するので接点に火花が発生しない。
火花を散らして一気に流れず、環流しながら減衰するので、フライホイル( flywheel : はずみ車 )ダイオードという。
環流するので、モータの停止に時間がかかる。
ダイオードの順方向電圧降下は、電流によって変わるが 0.6 〜 1.2 V の範囲なのでモータ端子間電圧がこの電圧に抑えられると言ってもいい。

これらは過渡現象といい、ゆっくりといっても 20 ms ぐらいの短い時間におこる。


☆フライホイルダイオードかフリーホイルダイオードか?
フリーホイルダイオードという人もおり、どちらの呼び名が正しいのか?という議論がある。
この手の話はたくさんあり、最初に命名した人に従う、少々変でも大手メーカが使用したのが標準になるなど、厳密に正誤を論じる物ではないと思う。
各人が最初に勉強したものが正しいと思っているので、固執しがちになるが、どうしてと聞くとしどろもどろになるのが普通。
決定的な根拠はなく、どっちでもいいのであり、好みの問題である。
私がフライホイルダイオードのほうを好む理由は下記

@フライホイルは急な変化を吸収し、ピークを抑える機能があり、おもちゃ病院では手慣れて聞きなれた名称である。
誘導負荷を OFF するときのピーク電流を抑え、還流して電流をゆっくり減衰させるという動作がピッタリで、感覚的に理解できる。

Aフリーホイルと聞くと自由輪であり、キャスターのことかな?と何のことかわからない。
B自転車の後輪を指すとは一般にはあまり知られていないし、片方向伝達装置+片方向通電素子の意味重複でおかしい。
負荷から回されるエネルギーを逃がすという動作はわかるが、ダダ漏れの感じで還流して減衰するという意味合いは感じられない。


☆フライホイルダイオードの選定
逆耐圧は電源電圧の 10 倍、順電流はモータの通常電流の 1.5 倍以上を見ておく。

RC 280RA-2865 ( 4.5 〜 6 V 定電圧、適正負荷電流 1.36 A、ストール電流 6.9 A )モータとすると、逆耐圧は 6 V × 10 = 60 V 以上 、順電流は 1.36 A × 1.5 = 2.04 A あたりを選定する。
FA 130 なら 0.66 A × 1.5 = 1 A

根拠は、DC コイル ( リレー、ソレノイド ) では、一般に 4 〜 8 倍の電圧が発生する → 余裕をみて 10 倍
順電流はモータ通常電流から 0 に減衰なので通常電流値以下でよい → 余裕をみて 1.5 倍
メカクラッチがあって逃げているときは、電流が 3倍くらい増えるが瞬間なので無視する。

マブチの性能値は定電圧電源のものであり、単 4、単 3 アルカリ 電池 は定電圧電源ではないので、ギヤロックなどでストールしても 6.9 A などは到底流れない。
NI-MH でも 4 A ぐらい?
ストール時 OFF は異常事態であり得るのだが、ダイオードの順方向ピークサージ ( 8.3 ms 間 )耐電流が 30 倍の 60 A くらいあるので、無視する。
おおむね定格の 5 倍電流で 1 秒は耐えられるようである。
1N 4148 は定格 100 V 200 mA で 1 A で 1 秒、4 A で 1 ms の耐サージがあるので、FA 130 ならいけるかも。パラにすればよりいいかもだが平均に流れてくれるかは?

リカバリータイムについては、おもちゃのモータ範疇では 高速の PWM としても 10 KHz ぐらい ( 100 μs ) なので普通のダイオード ( 数 μs ) でよい。

VF については VF 以上になると還流がはじまるので VF は低いほど良い。




☆正逆運転時のフライホイルダイオード

正逆運転では、SW 1 個のようにモータにパラに接続できない。
上図赤 S 1 と S 2 を ON すれば正転、緑 S 3 と S 4 を ON すれば逆転とし、赤と緑は同時には ON させない。
フライホイルダイオードは、図のように配置する。
赤 S 1 と S 2 ON で流れる電流を赤、緑 S 3 と S 4 ON で流れる電流を緑とする。





下図は、赤 SW を OFF したときの環流ループが赤、緑 SW を OFF したときの環流ループが緑で示してある。
どちらも電源に逆向きに帰るループとなるので、10 μF ぐらいを入れておく。
減衰は SW 1 個のものより少し早くなる。
電流が SW を通らないので高圧がかからず、保護されることになる。


この図は結線上は合っているのだが、あたかも左のトランジスタを保護しているような誤解を招き、トランジスタ直近に実装しなくてはと誤解を与えてしまう。
上の下図の赤 SW が切れるときの赤 SW の保護は、緑 SW 横のダイオードである。
図としてめんどうでもダイオードの足を +− とモータ線まで引き、実装は発生源のモータとコモン間の最短位置にするのがよい。
このトランジスタの保護用でないことを知っていればこうは書かないのでは?回路図としては失格である。
またこの書き方は普通、外付けを示し、MOSFET などの内臓の場合は別の書き方をするほうがいい。


☆機械的過負荷に注意する。
モータの停止動作を LS 接点で行っているおもちゃ(クレーンゲームなど)の LS 接点の荒れ防止にフライホイルダイオードを追加すると、停止時間が延びるため END 端で当て止めになり、機械的に壊れないか?ギヤがロックしないか?などを確認する必要がある。
機械的に NG の場合は、
☆ダイオード取り付けをやめ、通電容量の大きい LS にする。
☆ LS の b 接点で 大容量 FET を動作させモータを駆動する。
☆ LS を早めに動作させ、当て止めをなくす。



Cダイオードの良否チエック
ダイオード新品 3 種類の良否をデジタルテスターとアナログテスターでやってみた。
基板についている状態では回路からの回り込みがあることがあり、良否は判断できないことがある。
メーカや機種によって違うようなので、思い込みしないこと。

結果から見ると、
・デジタルテスターでは、ダイオードレンジで測定し、順方向電圧降下値が Vf ( V )、逆方向が 0 ( V ) で正常と言える。

・アナログテスターでは、× 1 KΩ レンジで測定し、順方向抵抗が 2.5 KΩ程度、逆方向が ∞ で正常と言える。

1N 4007 の V - I 特性

Vf ( 0.7 V ) まではほとんど流れないので 2.5 KΩであっても不思議でない。
0.8 V で 0.3 A だから 2.7 Ω、1 V で 1 A だから 1 Ω、1.2 V で 4 A だから 0.3 Ωとなる。
用いたアナログテスターの × 1 KΩ レンジでどうして 2.5 KΩ を示すのかわからない。
テスターの赤黒端子電圧は 黒側が + で 1.5 V ある。

・デジタル、アナログとも導通ブザーレンジでは判定できなかった。

-- SANWA PM 3 デジタルテスター モノタロウ MR-3B アナログテスター
型番 測定レンジ 順方向 逆方向 測定レンジ 順方向 逆方向
1N 4148
100 V ・ 0.2 A
ダイオード 0.503 V 0 V --- --- ---
導通ブザー 鳴らない 鳴らない 導通ブザー かすか 鳴らない
オート Ω 0.857 MΩ 0 MΩ ×1 KΩ 2.7 KΩ
1N 4007
1 KV ・ 1 A
ダイオード 0.461V 0 V --- --- ---
導通ブザー 鳴らない 鳴らない 導通ブザー かすか 鳴らない
オート Ω 5.38 MΩ 0 MΩ ×1 KΩ 2.4 KΩ
RL 204
400 V ・ 2 A
ダイオード 0.465 V 0 V --- --- ---
導通ブザー 鳴らない 鳴らない 導通ブザー かすか 鳴らない
オートΩ 8.5 MΩ 0 MΩ ×1 KΩ 2.5 KΩ





D保護のいろいろまとめ
TYPE 保護対象 備考
 配線、モータの過電流保護  ダイオード
 ヒューズ
 抵抗ヒューズ
 ポリ SW
 SW 接点の保護  フライホイルダイオード
 ファーストリカバリーでなくていい
 停止時間が延びるが、ダイオードと
 直列逆向きツェナーで改善可
 トランジスタ保護  フライホイルダイオード
 トランジスタに耐圧があれば不要
 モータノイズによる
  IC 誤動作保護
 104 コンデンサ 3 個
 トランジスタ保護にもなっているが
 耐圧不足な場合、上記ダイオードの併用可



(4)コンプリメンタリトランジスタ ( P 型と N 型で逆同一特性のもの )

PNP NPN Vce(V) Ic(A) Pc(W) 外形 備考
2SA733 2SC945 50 0.15 0.4 TO-92 イーエレ
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SS8550D SS8050D 40 1.5 1 TO-92 イーエレ
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2SB772 2SD882 40 3 1 TO-126 サトー電気
2SA928A 2SC2328A 30 2 1 TO-92NL ------
2SA1359Y 2SC3422 30 3 1.5 --- 秋月電子
2SA1020-Y 2SC2655-Y 50 2 0.9 TO-92MOD 共立エレショップ
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(5)パワーMOSFET

今後急速に使用されるであろう、パワ−MOSFET( metal - oxide - semiconductor field - effect transistor )を調べておく。

@構造

P - ch MOSFET { P - channel ( チャネル ) MOSFET }
☆電極は、ソース、ゲート、ドレインの 3 個で、ゲートの対抗電極はソースに接続されている。
☆ゲートは、灰色の SiO2 層で N 型と絶縁されており、コンデンサ極として振る舞い、充電電流しか流れない。

☆SW 動作では、ソースに +、ドレインに負荷を接続し、ゲート電圧 ( H か L ) で電流を ON / OFF する。

☆P - ch とは、ゲートに L 電圧 ( 0 V ) をかけると、ゲートの下部に左右の P 型間を結ぶ P 型の channel ( 小道 : 導通路 )ができ、電流はソースからドレインに流れる。


N - ch MOSFET
☆P - ch と P 型、N 型が逆になっている。

☆SW 動作では、ドレインに負荷を接続し、ソースを接地する。

☆N - ch とは、ゲートに H 電圧 ( 例えば 5 V ) をかけると、ゲートの下部に N 型の channel ができ、電流はドレインからソースに流れる。

バイポーラ・トランジスタのように、 P と N キャリアが移動するのではなく、P か N のいずれかのキャリアで導通するため、ユニポーラ・トランジスタとも呼ばれる。


A1方向駆動回路

☆左図は、ボタンが ON で、チャネルができ、モータが回転している様子で右図は記号でかいたもの。

☆R は外付けプルアップ抵抗、S - G 間には 静電気による G 破壊防止ダイオード
S - D 間のダイオードは、当初から意図したものではなく、PN 構造上できてしまうので、ボデイ(寄生)ダイオードと言われている。

☆MOSFET の記号だが、複雑であり、小さい矢印が電流の向きを表しておらず、誤解と混乱を招く。
これでは見ただけでイヤ、書くのもイヤになってしまい、MOSFET がかわいそう。
小生は、C-MOSFET に矢印をつけた右端の記号を使うことにする。
白丸は Low−Active を表す。

☆ソースはバイポーラ・トランジスタのエミッタ、ドレインはコレクタに相当する。
ゲートはベースに相当するが、電流がソース間に流れないところが大きな違いである。
P - ch、N - ch とも負荷の片側は、D ( ドレイン )に接続する。
 
☆ソースとドレインは構造上同じもので、区別しているのは対抗電極の接続とボデイ(寄生)ダイオードの向きである。
逆向きに接続すると、ボデイ(寄生)ダイオードは焼損し、諸性能は低下するが、また正規接続に戻せばトランジスタとして動作はするらしい。













BH ブリッジ回路

☆マイコンから、a b c d を駆動すれば、e f の小 MOSFET が省ける。
a、c を OFF し、b、d を ON にすれば発電ブレーキとなる。
ブレーキ時の電流経路は、モータ → b FET 主回路 → d FET 主回路、寄生ダイオード、フライホイルダイオード → モータ
逆の場合、モータ → d FET 主回路 → b FET 主回路、寄生ダイオード、フライホイルダイオード → モータとなり、モータ電極間がほぼ短絡状態になり強い制動となる。
FET 主回路は、N - N チャネル - N なので正逆どちらへも流れられる。
最大のブレーキ方法は逆転することだが、怖くてできないね。

☆H ブリッジの場合、ボデイ(寄生)ダイオードがフライホイルダイオードとして使えるのでは?だが、当初、このダイオードは回復時間も遅く、VF も大きかったので推奨できませんとされていた。また勝手に停止時間がのびても困る。
しかし最近では改良され、フライホイルダイオードとして使えるものもあるという。
使用する FET、モータ、PWM などの特性やコストを十分理解した上で決めねばならないが、かなり高度な判断であり、外付けで考えておくのが無難である。

☆おもちゃ用の 3 A クラスのパワー MOSFET H ブリッジ IC が待たれる。
おもちゃ用として見つけたのは、
2ch 0.8 A ( ピーク 1.5 A ) の GMT G2011
2ch 0.8 A ( ピーク 1.5 A ) のAimtron AT5562



C特性

☆グラフは P - ch のもので、N - ch では符号を + にして読みかえる。
VGS が一定のときの、VDS と ID の関係である。

☆比例する線形領域とほぼ定電流になる飽和領域があり、通常は飽和領域を使う。
線形領域は、可変抵抗素子として使える。

☆右回路でボタンを押したとき、VDS は 3 V、VGS は 3 V で、 ID は グラフ交点の 6 A まで流すことが可能。

☆マブチ 130 クラスのモータの停動電流は、2 A ぐらいなので起動させることができる。

☆モータ抵抗を 5 Ωとすると、運転電流は、3 / 5 = 0.6 A となる。

☆VGS が 3 V 時の D - S 間の ON 抵抗は、0.2 Ω ぐらいと小さく、VDS は、0.2 × 0.6 = 0.12 V となり、モータに 2.88 V がかかることになる。

☆VDS が 0.12 V のときの電流は、このグラフからは読み取れない。
データシートの別の表から、VGS が 3 V で周囲温度が 25℃ の時、連続して流せる電流は、0.86 A となっており、とくに冷却しなくても運転できる。

Texas Istruments TPS-1101


D参考
☆ JIS C - 0617 - 5 : 2011 電気用図記号−第 5 部:半導体及び電子管 の 05 - 05 - 11












---- 2020.10.07 ----